💡 この記事の結論【30秒で分かる3つの要点】

✅ 令和8年1月1日施行:「いかなる名目でも報酬を得て」書類作成は行政書士法違反に
✅ 両罰規定の適用拡大:担当者だけでなく会社も処罰対象(100万円以下の罰金)
✅ ディーラーの「無償サービス」:車両販売代金に含まれる以上、「報酬を得て」に該当
✅ 対象範囲:自動車登録だけでなく委任状車庫証明・すべての官公署書類
✅ 選択肢は2つだけ:①お客様本人が記入 ②行政書士に依頼

【重要】令和8年1月1日、行政書士法が改正施行されます

この記事では、法改正の内容と、自動車販売店の皆様への影響について解説します。

「なんで書類を書くだけなのに、行政書士に頼まないといけないの?」

自動車販売店の皆様から、このようなご質問をいただくことがあります。

お気持ちはよくわかります。

しかし今回は、この疑問にお答えするだけでなく、来年1月に迫った法改正について、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。

これは「誰かの話」ではありません。自動車販売に携わるすべての方に直接関係する話です。

令和8年1月1日、行政書士法が改正されます

令和7年6月13日、行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)が公布されました。

📄 公式情報源(総務省)

行政書士法の一部を改正する法律の公布について(通知)
総務省自治行政局長通知|総行行第281号|令和7年6月13日

施行日は令和8年1月1日

あと約1ヶ月後です。

この改正で何が変わるのか。結論から申し上げます。

改正のポイント:「いかなる名目でも」が明文化

【改正前】行政書士法 第19条第1項

行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない

【改正後】行政書士法 第19条第1項

行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない

追加された文言は——

「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」

です。

これは自動車登録だけの問題ではありません

ここで、行政書士法が定める業務の範囲を確認しておきましょう。

行政書士法 第1条の3(業務)

行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

注目すべきは、「官公署に提出する書類」という文言です。

官公署とは、国や地方公共団体の機関すべてを指します。

「官公署」に該当する機関の例

・運輸支局、軽自動車検査協会
・警察署(車庫証明)
・市区町村役場
・都道府県庁

・その他すべての行政機関

つまり、この法律が規制しているのは——

行政書士法が規制する範囲

自動車登録申請書だけではありません。

軽自動車届出書だけでもありません。

官公署に提出するすべての書類が対象です。

自動車販売の現場で作成される書類を例に挙げると——

書類 提出先(官公署)
自動車登録申請書(OCR) 運輸支局
軽自動車届出書(OCR) 軽自動車検査協会
車庫証明申請書 警察署
委任状 運輸支局・軽自動車検査協会
譲渡証明書 運輸支局
申請依頼書 軽自動車検査協会

これらすべてが、行政書士法の規制対象となります(他の法律によるべきものを除く)。

【ディーラー必見】「無償サービス」「手数料0円」は通用しません

この改正の趣旨について、総務省の通達(総行行第281号・令和7年6月13日)にはこう書かれています。

総務省通達より

「『手数料』や『コンサルタント料』等どのような名目であっても、対価を受領して、業として、官公署に提出する書類等を作成することは違法であるという現行法の解釈を条文に明示する

ここで重要なのは——「現行法の解釈を明示する」という点です。

つまり、新しいルールができたわけではありません。元々あったルールが、より明確に条文化されたのです。

ディーラーの「無償サービス」が通用しない理由

全国軽自動車協会連合会の通達(令和7年10月14日)では、さらに踏み込んだ説明がされています。

全軽自協通達より

ディーラーと顧客の関係は、車両の販売・整備等を介した商取引であり、必ず金銭の授受が伴います。

このため、その商取引の一環としてディーラーが顧客の申請書類を作成する行為は、たとえ「無償サービス」や「手数料0円」をうたったとしても、実質的には取引全体に含まれる報酬を得て行う行為と法的には判断されます。

つまり——

  • 「書類作成は無料でやっています」→ 通用しません
  • 「手数料はいただいていません」→ 通用しません
  • 「サービスの一環です」→ 通用しません

車を売る、整備をする。その商取引の中で書類を作成している以上、「報酬を得ている」と判断されるのです。

【重要】両罰規定の適用拡大——社員だけでなく会社も罰せられます

今回の改正で、もうひとつ重大な変更があります。

「両罰規定」自体は以前から存在していましたが、これまでは虚偽の申請による行政書士登録などの違反に限定されていました。

改正により、第19条違反にも両罰規定が適用されます

つまり、非行政書士による書類作成業務についても、行為者だけでなく、その法人(会社)も罰せられるようになりました。

改正後の罰則条文

第21条の2(新設)

第19条第1項の規定に違反したときは、その違反行為をした者は、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処する

第23条の3(両罰規定・改正)

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第21条の2(中略)の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する

これが意味すること

従来は、第19条に違反しても罰せられるのは「個人」だけでした。

改正後は——

対象 罰則
書類を作成した社員個人 1年以下の拘禁刑 または 100万円以下の罰金
その社員が所属する会社 100万円以下の罰金

社員と会社、両方が罰せられます。

「社員がやったことだから会社は関係ない」は通用しません。

なぜ今、この法改正なのか?

ここで、冒頭の疑問に戻ります。

「なぜ書類を書くだけなのに、行政書士に頼まないといけないの?」

信号無視と同じ理屈です

Q. なぜ赤信号で止まらなければならないのでしょうか?
→ 法律にそう書いてあるからです。

Q. 検査員の資格がない人が車検を通したら?
→ 同様に罰せられます。

書類作成も同じです。

「誰でも書ける」ことと「誰でも書いていい」ことは違います。

信号無視も物理的には「できる」。でも法律があるから「しない」。

書類作成も物理的には「できる」。でも法律があるから、報酬を得て繰り返し作成することは、行政書士以外は「できない」のです。

【自動車販売店の選択肢】2つしかありません

全軽自協の通達では、「遵守すべき業務プロセス」として以下が示されています。

選択肢1:お客様ご本人が記入する

申請書類の作成は、必ず申請者本人が記入して行う。

選択肢2:行政書士に委任する

書類の作成を希望する顧客には、国家資格者である行政書士に依頼する必要があることを明確に説明し、顧客の同意のもとで行政書士と連携する。

「間の人」は関われない

この2つの間に入る人は、書類作成には関われません。

検査員でない整備士が、検査ラインを通せないのと同じ。
信号を無視しないのと同じ。

法律でそう決まっている以上、それに従うしかないのです。

「他人事」ではありません

全軽自協の通達には、こう書かれています。

全軽自協からの警告

行政書士法違反は刑事罰の対象となります。コンプライアンス違反による信用の失墜は、企業経営に計り知れない損失を与えます。

これは業界団体からの正式な警告です。

令和8年1月1日まで、あと約1ヶ月。

「うちはずっとこのやり方でやってきた」
「今まで問題になったことがない」

そのお気持ちはわかります。

しかし、法改正により「いかなる名目でも」と明文化された以上、従来の運用を続けることは明確な法律違反となります。

よくある質問

Q. 手数料0円サービスは違法ですか?

A. 令和8年1月1日の法改正後は、「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」と明文化されるため、実質的な対価がある場合は違法となります。

Q. ディーラーが書類作成すると違法ですか?

A. 報酬を得て業として行う場合は行政書士法違反となります。両罰規定により、担当者個人だけでなく会社も処罰対象です。

Q. 両罰規定とは何ですか?

A. 違反行為を行った従業員だけでなく、その使用者である法人や事業主も併せて処罰される規定です。行政書士法改正で新たに導入されます。

Q. いつから施行されますか?

A. 令和8年(2026年)1月1日から施行されます。

この記事の執筆者

菊地行政書士事務所 代表

行政書士 菊地幸雄

最終更新:2025年11月30日

まとめ:今すぐ業務の見直しを

改めて整理します。

法改正の要点
施行日 令和8年1月1日
改正内容 「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」が明文化
対象範囲 官公署に提出するすべての書類(自動車登録に限らない)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成すること
罰則 1年以下の拘禁刑 または 100万円以下の罰金
両罰規定 第19条違反にも適用拡大(社員+会社)

即時中止すべき業務

顧客の依頼による申請書類の作成
(請求名目や作成費用を無償とするか否かを問いません)

遵守すべき業務プロセス

1. 申請書類の作成は、必ず申請者本人が記入して行う
2. 書類作成を希望する顧客には、行政書士への依頼が必要であることを説明し、顧客の同意のもとで行政書士と連携する

お問い合わせ

弊所では、自動車登録・軽自動車届出に関する書類作成を承っております。

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